
しあはせ融けし渓流に 大坪命樹第四歌集(文藝同人無刀会)
大坪命樹が、見よう見まねで短歌を詠み始めて、早8年が経った。しかし、依然として誰にも師事せず、大坪は一人で好きなように詠んでいる。もともと、源氏物語の世界に憧れて短歌を始めたために、古文を多く取り入れた詠み方だが、現代語との折衷の具合が、大坪の個性として色濃く現れ出ていることだろう。
古文の方法論以外は、技巧的なことはあまり研究せずに、思ったままをそのまま正直に詠んだ歌は、一般の現代短歌とはずいぶん肌色が異なる。しかし、描かれる世界を読み取ることができたなら、大坪の感じたままの感動が、なまなましく再現されるに違いない。

書名は、上高地に行ったときの歌に、
川原へと下りて清水を手に触る 穂高を偲ぶ美(い)しき冷たさ
とあるところから、雪解け水を捩って付けた。
長歌を含めて198首を収載。
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「癲狂恋歌」
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